沿道のコラム

(4)大井なぎさの森散歩(南大井一丁目−流通センター駅2.9Km)

 江戸時代から続く埋め立てにより江戸・東京は膨張し続け、今も止まらない。

1.東京湾の埋め立てと大井ふ頭

 東京湾の埋め立ての歴史は古く、江戸時代にさかのぼる。1603(慶長8)年、徳川家康が江戸市街地形成のため日比谷入江を神田山の土砂により埋め立てたのが始まりで、以来埋め立て事業は現代まで400年以上にわたって営々と引き継がれてきた。
 現在ではすでに東京湾海岸線の90パーセント近くが埋め立てによる人工海岸となっており、その大部分は戦後埋め立てられたものである。とりわけ高度経済成長期以降には最も埋め立てが進み、1960年から80年までの20年間に埋め立てられた面積は、それ以前の江戸時代からの埋め立て面積の4倍近くにも達する。
 大井ふ頭の大規模な埋め立てが始まったのも戦後。昭和44年に大井ふ頭の建設が開始され、46年には最初のふ頭が完成。東京港開港以来初めての欧州航路定期貨物船が就航することになった。現在は外国からの水産物を荷揚げする「水産物ふ頭」と、数千台のコンテナが待機する「コンテナふ頭」に分けられている。周囲には、太平洋ベルト地帯を結ぶわが国最大の物流基地「京浜トラックターミナル」、流通関連企業の集まる「東京流通センター」の他、平成元年からは「中央卸売市場大田市場」が業務を開始し、大井ふ頭はますます一大流通拠点としての活気を呈してしいる。
 しかしこの戦後の埋め立てによりそれまで続いていたノリ養殖は1962年に漁業権が放棄され、完全に消滅した。最近では三番瀬の保全の是非をめぐる動きなど、埋め立てにより失われた東京湾の自然を取り戻そうという考えも取り入れられるようになっている。鉄とコンクリートでできた護岸に、人工的に干潟やなぎさ、浅瀬などを造成するケースも増えてきている。

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